「シルバーレイン」の北野坂かののブログです。
わからない人にはわからない内容です。
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廃墟が好きだ。
散策の途中、古びた日本家屋を見つけた。
主はないらしい。
辺りをうかがい、そっと足を踏み込んだ。
散策の途中、古びた日本家屋を見つけた。
主はないらしい。
辺りをうかがい、そっと足を踏み込んだ。
古びた木と畳の香り。
不快なにおいではない。
ぎしぎしと音をたてる板の廊下を抜け、奥へと進む。
陽の光の差し込む部屋が開いたままの襖から見えた。
そこを目指す。
部屋を覗き込んだとき、
目が合った。
ぬばたまのような長い黒髪の女性が、
座敷に正座していた。
外を眺めていたのだろうか。
窓からは遠く海が見える。
日差しに透ける紫の瞳がこちらを見すえている。
うちは言葉を発せずにいた。
「………銀誓館の、生徒かえ。」
女性が言葉を発した。
言葉から察するに、銀誓館の関係者なのだろう。
古風な言葉に着物といういでたちに、
『土蜘蛛』が頭をよぎった。
うちの無言を肯定ととったのか否定ととったのか、
女性は黙って外をみやった。
すると、一体の蜘蛛童が音もなく部屋にはいってきた。
「吾子の友か。…ならばわしの友でもあるな。」
女性は静かにいう。
蜘蛛童の友人はライラくらいしか知らないが、
その蜘蛛童はどうやらライラではないようだった。
「おまえさまをいとう心配しておる。」
「心配?」
「此方へ来やるな。去に給え。
此処はおまえさまの来給う処に在らず。」
女性は去るように言うが、
けして攻撃的でも嫌悪した様子でもなかった。
ただやさしく…説得しているようだった。
「…あの、その子の名前…は?」
うちはおずおずと聞いた。
もしかしたらマヤちゃんの知った子なのかもしれない。
「童に名はなし。さ、行きたもれ。」
女性のうながすまま家屋をあとにした。
夏の日の不思議な体験であった。
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