夕餉

ひさびさに姉妹揃っての夕食。

「なあ、かのちゃん。
　マヤなー、せんせーに進路考えいわれてん。」
「…ふーん？…『仙人』ゆーたらよかったやん。」
「ゆった！
　そしたらめっちゃ怒られた！」
「………。」
「兄貴ー打て～！」
妹は野球中継に夢中だ。

なんとなくふと思い出したことをつぶやいてみる。
「そういや、あの西宮んとこの大学、
　甲子園球場のバイトの募集ようくるらしいで。」
「！？…まじで！？」
「…え、うん…。そない聞いたけど。」

カレーを食べていたスプーンを握ったまま、
妹は立ち上がった。
「マー、大学いく！！！」
「は！？」
「大学いく！」
「ちょっと！あんためっちゃ勉強きらいやん！？」
「『なせばなる』！！まだ二年やし！」

面食らっていると、
妹は突然電話をかけはじめた。
「もしもし？オトン？マーやけど。
　あんなー、マーなー、大学いく！！」
驚きの声が漏れ聞こえてくる。
「…うん、あんな、あの西宮んとこ！
　……うん、そう、そう。」

電話をきって妹がふりかえる。
「あんなー、オトンが『なせばなる』って！」
………頭痛がする。
「…はぁ。」

あと一年ちょいで偏差値３０もはね上がるんか！？
「夏期講習申しこも。
　アキちゃんの塾であるゆーとったし。」
「……あんた、大学いってなに勉強するん？」
「…んー……？…教育！！」
「教育ぅ！？なに教えんのん！？」
「……社会の厳しさ！」
それはまずあんたが知れ。

「まあ、がんばり…。」
「うん！おばあが『公務員がええ』ゆーとったし！」
「…さよか…。」

うーん…。
『適当に大学かどっかはいるんちゃいますかね』で
お茶をにごしてきているうちよりは
夢があってええ…んか？